山中卓研究室は、巨大な粒子加速器と巨大な粒子検出器を用いて素粒子の性質を解明することを目指しています。
私たちの住む世界には様々な物質があふれており、それらは原子で構成されています。 さらに原子は原子核と電子からなります。 現在では原子核を構成する陽子・中性子よりもさらに小さな単位であるクォークや電子などが物質を構成する最小の単位であると理解されています。 これらを素粒子と呼びます。
私たちは粒子を光速近くまで加速させ、それらをお互いに衝突させるか固定された物質にぶつけることで、自然には存在しない素粒子を作り出し、その性質を調べたり未知の粒子を探したりしています。 そもそもなぜ素粒子を作り出すことができるのでしょうか。 アインシュタインによって導かれた式E = mc2が教えてくれることは、エネルギーと質量は等価であるということです。 すなわち、エネルギーから質量を持つ素粒子を作り出すことができるということです。 また、エネルギーの大きさによって作り出される素粒子の質量が異なることもわかります。
宇宙初期には物質と反物質が同じ量作られたと考えられています。 現在、宇宙では物質のみが存在し、反物質は通常存在することはありません。この物質と反物質の不均衡は今も謎のままです。私たちKOTOグループでは、K中間子という粒子の稀な崩壊事象である、 KL→π0ννを探索しています。この事象の探索を通じて、なぜ世界は物質で構成されているのかという疑問の解決につながる新しい物理の発見を目指しています。
2013年に実験を開始し、2015年以降毎年データを収集しています。
KOTO実験では探索事象が起きる確率は非常に小さく、多くのバックグラウンドがあります。 左図右下の電磁カロリメータ(CsI結晶を2716本並べている検出器)を用い、探索事象を検出します。その他の検出器は全てバックグラウンドを消すためにあります。これまで、大阪大学のKOTOグループでは、実験のデータ収集システムの統合、CsI電磁カロリメータの建設、及びインナーバレル検出器の設計、製作、建設を行い、バックグラウンド事象を削減することに成功しています。現在は荷電K中間子起源のバックグラウンドを取り除くため、KOTO検出器最上流部に設置する荷電粒子検出器の開発、およびその性能評価を行なっています。また、加速器の強度増大に伴い、データ収集システムの改良が必要なため、GPUを用いた事象選別の研究なども行っています。
世界最大の円形加速器である大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を用い、現存する加速器の最高エネルギーを生み出すことで、質量の大きい新粒子を作ることができます。 2012年には素粒子の質量の起源とされるヒッグス粒子を発見し、現在はその精密測定を行っています。 また、宇宙の暗黒物質解明につながる超対称性粒子の探索も行っています。
ATLAS検出器はLHCを用いて加速された陽子と陽子の衝突で生成される粒子を観測する汎用型の装置であり、生成される粒子の性質に合わせて様々な種類の検出器を用いています。 衝突点から外に向かって順番に、粒子の飛跡を精度よく捉える内部飛跡検出器、粒子のエネルギーを測定するカロリーメータ、貫通力の高いミューオンの飛跡検出器が配置されています。 私たち大阪ATLASグループは、内部飛跡検出器の半導体検出器の開発を行っています。 また、博士課程後期では欧州原子核研究機構(CERN)に長期滞在しデータの解析を行っています。